●●○鳥と空
あるところに、一羽の小さな鳥が、仲間たちと一緒に仲良く暮らしていました。
ある日、その鳥は言いました。
「あの空の、青い天井を取りに行きたい」
それを聞いた他の鳥たちは言いました。
「無理だと思うよ。やめときなよ」
でも、その鳥はやめようとはしません。余りに真剣なので、そのうちその熱意に負けた他の鳥たちは、口々に応援の言葉を掛け始めました。
「ありがとう。頑張って行ってくるよ」
そう言ってその鳥は、空の天井目指して飛び立ちました。
* * *
いくつもの昼と夜が過ぎました。それでも鳥は飛び続けました。
しかしいつまで経っても、空の天井は見えてきません。
そこで鳥は、少し休むことにしました。
高い山の頂上に降り立つと、周りを漂っている雲を眺めていました。
大きな山、大きな雲、そして大きな空。それに比べると、自分は何て小さくて弱いのでしょう。鳥は、何だか泣きたくなりました。
でも、泣いている暇はありません。あきらめないぞ、絶対負けない。そう自分に言い聞かせながら、もう一度飛び始めました。
やがて、鳥は疲れてうまく羽ばたけなくなりました。山もないので、休もうと思っても休めずに、ふらふらと飛んでいました。
すると、それを見つけた一羽の大きな鳥がやって来ました。
「どうしたの、大丈夫?」
大きな鳥が尋ねました。小さな鳥は答えます。
「あの空の天井を、少しちぎって持って帰りたいんです。だから今は、そこまで飛んでいく途中なんです」
大きな鳥は、その大きな目をもっと大きくして言いました。
「えっ? それは無理だよ」
「どうしてですか?」
小さな鳥が尋ねると、大きな鳥は説明しました。空の天井なんかないこと、そして、空には果てがないことを。
小さな鳥にとって、それは余りにも大きなショックでした。そんなこと、信じられません。でも、大きな鳥に言われて迷った挙句、地上に戻ろうと決心しました。
しかし折角ここまで来たのに仕方なく諦めることは、悔しく、とても辛いことでした。
鳥は、まるで落ちるように降りていきました。
そして仲間たちに会った鳥は、大きな鳥に教えられたことを話しました。それを聞くと皆残念がりましたが、あんなに高いところまで行って帰ってきた鳥のことを褒め、喜び、とても満ち足りた気持ちでした。
その時、鳥は自分では気付いていませんでしたが、空高くまで行ったためかその体は空の色に染まり、美しい青い鳥になっていました。
fin.
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FIELD OF VIEWの「大空へ」の歌詞を聞いて、そのインスピレーションで書いた作品です。
童話作家になりたかった、中学一年生の時の作品。
これを書いた当時、夢と現実のギャップとか、大人社会の汚さとかを知って、軽く未来に絶望してた気がします。
小さな鳥と自分を、重ね合わせていた。
でも今になって読み返すと、もし今の自分が小鳥なら大きい鳥の言うことなど信じないで、どこまでも飛んで行ってしまう気がします。